40TH ANNIVERSARY AUCTION

LOT 111

和歌浦 日吉山王祭礼図屏風    六曲一双

JPY 8,000,000 - 13,000,000
HKD 405,300 - 658,600
USD 51,700 - 84,000
技法 紙本、金地著色
サイズ 各/each : 125.0 × 281.3 cm
制作年 江戸前期 (Early Edo period/Mid-17th Century)

HIGHLIGHT

本作は紀州和歌浦と近江日吉山王社の礼祭を一双に描いた名所図屏風である。和歌浦隻には左に紀三井寺、その背景に名草山、向かい右に和歌浦天満宮、奥に東照宮が想起される建物が配置される。中央手前の砂洲には玉津島神社、奥には布引松と和歌浦の景勝地を鳥瞰した視点で眺めることができる。天満宮の浜辺の鳥居には葦原に降立つ鶴が描かれ、万葉の歌人山部赤人の和歌に詠まれた歌枕を想起させる。右下には和歌祭の様子が描かれ、海と陸から多くの参詣人、見物人が細かく描かれており、祭の行列の母衣や傘鉾、風流踊りの一種、雑賀踊が見え、海上には多数の御関船が浮かべられる。和歌祭の一場面が描かれ、その行列の後には大名行列も見受けられる。細密に人物が描写されており沿道で商いをするもの、物見遊山と決め込む人、遊興の人々と、その表情、着る衣装、道具に時代風俗を見て取ることができる。現代では廃れた御関船の様子も鮮やかに表現されている。もう片隻には日吉大社山王祭礼における琵琶湖での神輿の船渡御を描かれる。日吉大社は全国の日吉・日枝・山王社の総本山であり、その例祭である船渡御も鮮やかに絵巻のように描かれる。右手に日吉山王社、その手前の七本柳から船が琵琶湖へと出で、神輿を載せた七艘の船が集う様、また左には膳所の五社に献じる粟津御供の船が見える。船も木造船二艘を一つに繋げ並べたもので当時の様相を今に伝えるものである。山王祭は現在大津市の指定無形民俗文化財となっている。本作には落款、印がなく作者不詳だがいずれも東照宮がある地の景勝地が描かれているため徳川の統治下で描かれたものと推察される。金雲のたなびかせ方といい、非常に似た構図の和歌浦屏風が和歌山県立博物館、和歌山大学紀州経済文化史研究所に収蔵されていることから時代は17世紀中期で製作地は特定できないが工房作と推察される。この一双の屏風の描かれる景勝地には紀州和歌浦、大津日吉社の境外に日吉東照宮がある。和歌祭は、紀州東照宮の大祭、渡御の呼称であり権現祭りとも呼ばれ現在まで続き親しまれている。一方、日吉東照宮は東照宮造営に縁のある天台宗の僧侶であった天海上人が徳川3代将軍家光の治世(在職:1623年 - 1651年)に延暦寺山麓に建立された日本初の権現造の社である。どちらの名所絵も、江戸時代、徳川の治世には政情が安定したこと、民衆の旅への関心の高まりや、名所での行楽の盛行が背景にありこのような着色の祭礼屏風が描かれたと考えられる。両隻ともに時代の風物詩として、細密に描かれた時代絵巻として非常に価値のある作品である。

CONDITION REPORT