エルメスのバーキン カーゴ35は、人気の高いバーキンの中でも特にユニークなデザインを持つモデルで、2021年春夏コレクションで誕生した。限定品ということもあり流通量の少ない貴重なバッグである。バーキンバッグ自体は、1984年にエルメスのCEOであったジャン=ルイ・デュマと、イギリスの女優兼歌手であるジェーン・バーキンとの偶然の出会いから生まれた。飛行機の中で隣り合わせになった二人が、 ジェーン・バーキンの荷物が多くて整理が大変だという話をしたことがきっかけで、デュマが「もっと実用的なバッグを作りましょう」と提案し、誕生したのがバーキンであることは有名なエピソードである。その伝統的なバーキンを、ミリタリーウェアからインスピレーションを得てさらに実用的に、カジュアルなカーゴスタイルに作られたのがこの「バーキン カーゴ35」である。 特徴は複数のアウトポケットを配置した収納力と機能的な素材である。外側の5つのポケットは、スナップ付のポケットの他、カードケーススロットに専用のカードケース、仕切り付きのサイドポケットに加え、着脱可能なカップホルダーと、バッグ四面全てに収納機能を持たせたデザインとなっている。 素材はトワルゴエランという高品質なキャンバス地をベースに、スイフトというケリーやバーキンに用いられる高級牛革素材の組み合わせとなっている。トワルゴエランは非常に丈夫で、他のキャンバス地より耐水性が高いのが特徴でありエルメスのピコタンバッグにも用いられている。スイフトは手に吸い付くような滑らかさと柔らかさ、適度な弾力性がある上に、クロム鞣し技法により鮮やかな色合いを出せることから、ケリーやバーキンといったエルメスの代表的なバッグに使われている。この2種の素材にアウトポケットを手作業で複数縫い付ける工程は、通常のバーキンより2倍近くの手間と時間がかかると言われ、生産数が少ない理由の1つとなっている。機能と高品質に加え、ファッショナブルなこのデザインはミリタリースタイルから着想しているため、メンズライクな雰囲気もあり性別関係なく楽しめるジェンダーレスな逸品である。